気づいてない・・・

先週のことである。
知的障がいのある義弟を連れ、病院をハシゴした。
彼の住む夫の実家は我が家から車で1時間ちょいかかるので、しょっちゅう行くのは大変。
なので、通院はなるべくまとめている。
4月の第一週目だったので市民病院も主治医のいる医院も予約時間を大幅に超えて待つことになったが、義弟の機嫌は良く、病状にも変化なく、薬の変更もなく、順調に日程をこなした。
病院2軒、薬局2軒、床屋、昼食、市役所での障害福祉更新の手続きを済ませ、最後の最後に地元のショッピングセンターへ。
義弟の食事は私が10日分くらいまとめて作って冷凍やチルドにして運んでいるが、それでも毎日の食事を全部カバーできていない。私の作り置きのおかずがなくなると、義弟は自分でご飯を作っている。レトルトのこともあるが、ちゃんと料理もそれなりにできる。食材を買うために毎回、義弟と一緒にスーパーへ行くのだ。

その日は、そのショッピングセンターの特売日だったらしく、いつもにも増して、駐車場は車で一杯だった。
この辺りは、車がなくては生きていけない地区である。
せま~い農道を、軽トラが猛スピードで走っていたり、せこ道(名古屋弁でものすごく狭い道の意)から一時停止もせずに本道へ飛び出してくる軽四はしょっちゅう見かける。運転手が大変なご高齢らしきことも、よく見かける。センターラインを超えても平気、「ここはおらっちの道だ~!」のような運転は本当によく見る。
危険なのは、ご高齢の方ばかりではない。地元の人は、「いつもの交通の流れ」しかありえない、と思っているので、「こんなとこを車がそんなに走っているワケない」と信じているのか、狭い道でも猛スピードで走っている主婦層もよく見かける。
彼らの命は多くのドライバーの急ブレーキによって成り立っているのではないか、と思うこともしばしばである。
・・・とにかく、危険運転の大変に多い地区なのだ。(何しろ、愛知県は交通事故死ワースト1だ)

そんな地元のショッピングセンターだから、私はいつも、駐車場の中もそろそろ~っとゆっくり車を進ませる。
いつ、何時、駐車中の車が急発進してぶつかってくるかもしれんのだ。
とにかく、油断大敵なのである。
駐車場の中は混んではいたが、空きスペースを見つけ、そこに向かってゆっくり車を進ませた。
すると!
予想どおり(?)、駐車中の車の後方を通り過ぎようとした時、その駐車中の車は急にバックして私の車の右後方にぶつかりそうになった。が、すんでのところで回避。私の車の方が先に通り過ぎた。
「あぶないね~ あの車、後ろを全然見ていないよ!」
と義弟が言った。まさに冷や汗もののニアミスだった。
見ると、その車には高齢ドライバーのステッカーが貼られており、白髪の男性ドライバーであることが後ろ姿で確認できた。
そして、私はその空きスペースに車を駐めた。
その危ない車はもう行っちゃったかな、と思って見ると、その車は駐車スペースを変えただけのようで、なんと私の車の前列の、私の車の正面のスペースに車を入れようとしていた。
内心、「やだな~ あんな危ない車の近くかぁ」と思いつつ、義弟と私は、車から降りずになんとなくその車の動向を見ていた。
意味なく、車を前進させ後退させを繰り返している。
「何してるのかな~ あの車」と義弟が言う。本当に、何してるんだろう。スペースの中で、車は前後に何度も動いていた。

すると!
突然すごいスピードでバックしてきた。
で。
私の隣の車にどお~んとぶつかった。
ドカ~ン!というすごい音もしていた。ぶつけられた左隣の車は大きく揺れた。
まっすぐ後退してきていたら、間違いなく私の車にぶつかっていた。たまたま(?)ハンドルを左に切ってバックしてきていたので、私の左隣の車に激突したのだ。まさに、危機一髪である。
私たちは車から降りて、車の後方に回り、ちょうどハッチバックのドアを開けていた。ドアを開けながら、それでもその車から目を離さず見ていたわけなのだが・・・
もしぶつかってきた瞬間、義弟が助手席から降りるところだったりしたら、義弟は怪我をしていたかもしれない。
本当に、本当に、危機一髪だったのである・・・。

その車の運転手は、私の左隣の車にぶつけた後、また車を前進させて空きスペースに車を駐めた。
出てくるかな~と思って見ていると、そのまま車内に籠城している。
普通なら、どれくらいぶつかったのか、とりあえず車から降りてきて、相手の車と自分の車の損傷具合を見るだろう。
しかしその運転手は車から出てこなかった。
もしかして・・・気づいていない???
そして!
また急にバックしてきて、もう一度、私の左隣の車にぶつかったのである・・・。

2回目は、ぶつかっただけではない。
ぶつかって、更にアクセルを踏んで、更に後退させようとしている。
つまり、左隣の車を、もっと後ろへ押し込んでいるのだ。
ウインウインとその軽四は一生懸命、左隣の車を後ろへ押しつけている・・・。
運転手の後ろ姿を見ると、全然後ろを見ていない。まっすぐ、前を見たまま、後退のアクセルを踏んでいる・・・。
なんと、恐ろしいことか。
義弟は慌てて、その様子をみようと飛び出した。
危ない! と義弟を押さえた。知的障がいがあるので、ちょっと変わったことがあると、ものすごく興奮してしまうのだ。
義弟の腕を取り押さえたまま、持っていたメモ帳にぶつけた軽四とぶつけられた普通車のナンバーをひかえ、興奮状態の義弟をひきずってショッピングセンターのサービスコーナーへ行った。
サービスコーナーで、ぶつけられた車の運転手をアナウンスで呼び出してもらった。
何度か呼び出してもらったが、反応はなかった。

とりあえず買い物を済ませ、車に戻ると、例の軽四は後ろのバンパーがベコベコに凹んだまま、駐車されていた。
運転手は買い物に店内へ入っていったんだろうか、あの白髪の運転手の姿はなかった。
やはり、自分がぶつけたことに気づいていないのか??? 2回もぶつけたのに??? しかも、押しつけていたのに??? すごい衝突音もしていたのに???
一方、ぶつけられた私の左隣の車も駐車されたままだった。
義弟が左隣の車の前方に回って見ると、バンパーは大きく凹み、ついでにナンバープレートも大きく凹んでいた。
どう考えても、修理しなければいかんレベルだ。
かわいそうに・・・
そこに駐めたばっかりに・・・

私は踊り狂っている(!)義弟を連れ、もう一度、サービスコーナーへ行き、もし届け出をする時に目撃証言が必要でしたら私に電話ください、と私の電話番号を伝えておいた。
ついでに、地元の警察署へも同様の電話をしておいた。
私に時間が豊富にあれば、双方の運転手を引き合わせた上、警察への届け出をするまでお付き合いできたのだが、義弟は興奮状態で踊り狂っている(!)し、夕方もかなり遅くなっているので私も早く我が家へ帰らねばならん。何しろ、車で1時間以上かかるのだ。
そこまでお付き合いする時間がなかった。
因みに、知的障がいのある義弟は、嬉しい時や驚いた時は、大きな声で歌を歌って、よくわからないダンスをする癖がある・・・。車が次々と来る駐車場の中でなければ、気が済むまで踊らせてやってもいいのだが。そういうワケにはいかん。彼自身が交通事故の要因になってしまう。

それから1週間。
あの車、どうしたかなぁ。
修理したんだろうか。いや、しなきゃならんだろう。ものすごい凹損だったもんなぁ。
そしてぶつけた軽四は・・・
今でもまだ、気づいていないんだろうか。
自分がぶつけたのではなく、「誰かにぶつけられた!」なんて、家族に訴えてやしないだろうか。
2回もぶつけて??? しかも更にアクセル踏んでて???
気づいていないにも、ホドがあると思うんだが。

地元の警察署に電話通報した時、事故係の警察官は、
「う~ん、そんな運転手さんは免許証を返してもらわな、いかんね~」
と言っていた。
確かに。
車がなければ生きていけない地区なので、高齢ドライバーが多いのは仕方がない。元気に運転できるのはいいことだと思う。多少、ブレーキが遅くなるとか、安全確認が不十分であっても、しょせんは田舎道や農道だ。常に危険、というわけではないかもしれない。
が、ぶつけたことにも気づかないレベルとなると、話は別だ。
人様に迷惑をかけるようなレベルとなると、やはり免許証の返納を考えた方が良いだろう。

そして、私は勝手に想像する。
あの白髪の軽四のおじいちゃんは、いつも助手席に奥さん(おばあちゃん)を乗せて運転しているんだろうなぁ。
そのトシのおばあちゃんだと、自分は免許を持っていないことが多い。おじいちゃんの運転がいかに危ないかは、おばあちゃんにはわからない。いつか、とんでもない事故でも起こすんじゃないだろうか。おじいちゃんの運転で、おばあちゃんがひどい怪我をするかもしれない。
あるいは・・・
一緒に住んでいる(あくまで想像)息子さんに、「おい、オヤジ! 車が凹んでるぞ!」と叱られてるんじゃないだろうか。
「どこでぶつけてきたんだ! 車に乗るな!」とか、言われているかもしれない・・・
ついでに息子の嫁も加勢する(あくまで想像)。
「だから言ったんですよ! もうおじいちゃんは車に乗らない方がいいって!」・・・なんて。

高齢者ドライバーの事故はよく、テレビのニュースで報道されている。
「そうだろうなぁ」と思ってはいたが、目の前で見るとは思わなかった。
何しろ、夫の実家のある地区は高齢ドライバーが本当に多い。
今まで以上に、気をつけなきゃなぁ、と痛感した。
そして・・・
夫は何歳まで車に乗るかなぁ、などと、「将来の高齢ドライバー」のことも心配するのであった。



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