お金で解決

なんだか・・・いやらし~い題名なのだが、深くつっこまないでいただきたい。
疲れたから、歩くのがイヤだ・・・だから、タクシーを使う
ぐらいの、「お金で解決」と考えてほしい。

私のボウリング修行はまだ続いている。案外私は執念深いのだ。執念深い、というか、始めたらやれるところまでやりたい、という性質なのだ。
今は10日に1回くらいの割合で、夫や知的障がいのある義弟とボウリングを楽しんでいる。
そもそも、私はボウリングが苦手だった。アベレージはなんと!40くらいだった。それが、4ヶ月前。
アベレージが80に乗ったところで、マイボールを作り、義弟の通う知的障がい者向け作業所の親子ボウリング大会に参加した。大会ではスコア170を叩き出し、「とりあえず恥ずかしくないレベル」で大会を終えることができた。

せっかく作ったマイボール。
もったいないので、その後も地道にボウリングを続けている。
ボウリング大会は6月にあった。その頃はまだマイボールにも慣れていないし、「とりあえず恥ずかしくないレベル」にすることで精一杯だった。投げるボールもストレートボールだけだった。それでも、スピード&パワーでそれなりのスコアが出せていた。
しかし・・・スピード&パワー投法というのは、なかなかに疲れる。終わった後には握力がなくなったり、中指と薬指のつけ根が痛かったりした。
これはイカン、と思い、なんとか疲れない投法を探ることにした。

ドゥ・ハワイのオーナー、ボス菅原に相談すると、
「ああ、それはねぇ、フックボールを練習するといいよ」
と言われた。
え??? フックボール???
あの、ぐい~んって曲がるボール?
あんなの、プロとかキャリアのある人しかできないんじゃない?
「私にも、できるのかなぁ」
と言うと、ボス菅原は昼休みに、ペットボトルを握って、投げ方を教えてくれた。

その形で投げるとどうしてフックボールになるのかは、全然わからなかったが、とりあえず、その週末からボウリング場で試してみた。
すると・・・曲がるではないか。
ゆっくり投げれば投げるほど、右端のレーンのエッジに沿って進み、ものすごく大きくカーブして、1番ピンと3番ピンの間に突き刺さる。で、ストライクが激増した。
そしてとうとう、スコア200を出した。
1ゲームの中に、ターキー(ストライクが3回続くやつ)が2回出て、単発のストライクも1回出た。

私のマイボールは、本来、あまり曲がらないボールである。初心者向けの、「基本的にはストレートボール用のボールだけど、曲げることもできます」レベルのものだ。
要するに、ボールの中の芯が、直進しやすいようになっている。
一方、「曲がるボール」というのもある。これは芯が「曲がる用」になっていて、フックボールが投げやすくなっているボールだ。
私の物は前者なので、基本的には曲がらないボールなのだが、ボス菅原の言うとおりに投げると、かなりのフックボールが投げられた。ついでにボール自身も激しく回転する。
・・・結構、カッコイイのである。
たくさんのピンが倒れなくても、ボールがぐい~んと曲がるのを見るだけでも、とても楽しい。

しかし・・・
夫のボールは全然曲がらないのである。
夫はアベレージが150くらいで、ボウリングは結構上手な方である。
そして、私と同じ種類のマイボールを持っている。(ちなみに、色違い)
夫はかなり「器用貧乏」な人で、なんでもソコソコやってしまう。だから何に対してもあまりのめり込まないし、必死に練習しなくてもソコソコにできてしまう。だから、「ものすごくできること」も「ものすごくできないこと」も少ない。そして、私のように、血のにじむ努力とか、必死に練習するとかいうことは一切やらない。私は熱血系、夫は塩系なのだ。
そういう人なのだが、私のボールがぐい~んと曲がるのを見ては、
「ちっ」 ←現代社会において、本当にこういう舌打ちをする人はほとんどいないだろう
と言う。スコア200を出した時なんか、口もきいてくれんかった。

ここ1ヶ月は、
「なんでアンタのボールは曲がって、ワシのボールは曲がらんのだろう」
を繰り返し言っていた。
「くやしい~」と口に出しては言わないが、きっとかなり悔しかったのだろう。PCでいろいろなボウリングのビデオを見ては、フックボールを投げるシャドー練習を密かにやっていた。
でも、私が見る限り、夫の投げ方は私がフックボールを投げる方法と、ほとんど同じだった。私と同じ投げ方をしている。なのに、私のボールは曲がって、夫のボールは激しい回転はするものの、その軌跡はストレートだ。わずか~に、かる~く、すこ~し、曲がってるかな~・・・のような感じだ。
だから夫は悩んでしまった。
「同じ投げ方なのに、なぜ」
と。

私はこの職業柄、人のやることをじ~っと見て分析するのが得意だ。
全くの門外漢だし、私の個人的な見解なのだが、どうやら、夫のマイボールは夫にとっては軽すぎるように思った。
実は私のマイボールは12ポンド。夫のマイボールも12ポンドなのである。
そう。私と同じ重さのボール、同じ種類のボールなのだ。
私の方が夫より身体が大きい。だが、男性と女性では筋肉量が違う。
そもそも、私と同じ重さというのがイカンのではないか、と思ったのだ。
軽いボールを投げると、当然スピードが出る。だから、夫のボールは、曲がる前に既にピンに到達しているのだ。フックボールは、「曲がる用ボール」でないかぎり、速いボールではやれないのだ。プロの投げているボールは「曲がる用ボール」なので、スピードが出ていても曲がる。しかし私たちの持っているボールは「曲がる用ボール」ではないので、ゆるゆるボールでしか、曲がらないのだ。

「ねぇ、ボールが軽すぎるんじゃない?」
と夫に提案した。
私の意見をあまり取り入れる夫ではないのだが、わらをもつかむ思いだったのか、ハウスボール(ボウリング場備え付けのボール)の14ポンドを投げてみた。
・・・しかし、曲がらない。
相変わらず、ボールのスピードが速い。
確かに、ハウスボールは「絶対に曲がらないボール」なのだから、無理はない。
また夫は悩んだ。

「ねぇ、曲がる用のボールを買ったら?」
と夫に提案した。
曲がる用ボールというのは、結構高価だ。生活に関係のない、タダの趣味に、それだけのお金をかけるべきか否かを、夫は悩んだ。夫は節約もしないが、大した浪費もしないタイプだ。
お金を使うことには今まで大して悩むことのなかった夫だが、今回だけはかなり悩んでいた。
「だからさぁ、曲がる用ボールを買っても曲がらなかったら、その時に悩めばいいじゃん!」
という私の一押しで、とうとう「曲がる用ボール」を買った。

そして、昨日。
できあがった「曲がる用ボール」を投げてみた。
曲がる。
ぐい~んと曲がる。
ボールを選んでくれたプロ曰く、「これで曲がらなかったら、ウソです」くらいの太鼓判を押されたボールだったが、その言葉は正しかった。そして、私の言った「軽すぎるんじゃない?」も正しかった。プロからは「軽すぎてスピードが出ると曲がりにくいですよ」と言われ、2ポンド重くして、14ポンドのボールにした。
そんなこんなで、あれだけ何をやっても曲がらなかった夫のボールが曲がっている。

「根本的な解決じゃないかもしれんが、とりあえず、お金で解決! だな」
と夫は言った。
いいではないか。
道具というのは大事だ。
私だって、振りやすいウリウリが手に入るなら、高くても買う。
良い音の出るイプヘケが手に入るなら、高くても買う。
それが道具というものだ。
ドゥ・ハワイ・カルチャースクールの受付のす~さんが、高価な硯を勧められて買った、という話を聞いたが、趣味の道具というのは、そもそも高いし、手に入れる喜びは尋常ではない。
去年、私の弟が剣道の胴を新調したが(弟は五段)、腰を抜かすような値段だ。しかし弟は満足している。
高かろうがなんだろうが、自分が認めた価値があると思うならば、それでいいのだ、と私は思う。

夫は自分の投げたボールがぐい~んと曲がるのを見て、小躍りしている。 ← 本当に小躍りしている
もう悩んではいない。
「フックボールを投げるというのは、マイボールの醍醐味だなぁ」
と言っている。
お金で解決、というのはいやらしいことかもしれないが、それで満足するなら良いのではないか、と思う。
少なくとも、悩んで悶々としているより、ずっといい。

「先生、世の中のコトの8割はお金で解決できますよ。だから、悩み過ぎちゃイカンですよ。」
と、父の介護で悩んでいた私に教えてくれた生徒さんがいたが、その通りかもしれない。
夫の新しいボールは、その8割の中に入っているのだなぁ。

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