脱ぎ捨てられたパンツ

カヒキラウラニご一行様がお帰りになられて早1週間。
レッスンでは、
「楽しかったです」
「しっかり騒ぎました!」
「クムに会えて感激しました」
などなどの言葉をいただき、生徒さん達も楽しんでくださったことを実感している。

ディナーショーは大いに盛り上がった。
生徒さんの中には、「先生はいいですねぇ~ 舞台の袖で間近に見られて!」とおっしゃる方もあるのだが、実は私も直美先生も、ステージは一切見られていない。
これはいつものことだ。

イベントに出演された経験のある生徒さんはよくご存知だと思うが、舞台裏はいつも戦争なのである。
髪飾り・レイ・ピン・化粧道具を長机に並べる。水のペットボトル30本・タオル20枚・鏡・サーキュレーターもその長机に載っかっている。ぎっしりだ。
衣装はハンガーラックに、使う順番に並べる。女性のドレスは全部ファスナーを下ろしておく。
・・・という準備をしてから本番に入るのだが、いざ本番になると、水のペットボトルはあちこちに飛び、タオルは誰のものかがわからなくなり、衣装の順番も狂ってくる。
それを常に整然と保ちつつ、舞台裏を運営するのが私の役割だ。今回は直美ちゃんがいてくれたので、かなりスムーズだった。

こんな感じである。
踊り終わったオラパが舞台からハケる → 汗で貼り付いた衣装を脱がす・ボタンをはずす・ファスナーを下ろす・レイやクペエをはずす → 汗をバスタオルで拭く → 水を飲ませる → 水を飲んでいる間に次の衣装を着させる準備をする → 団扇で身体をあおる → 次の衣装を着させる・ファスナーを上げる・ボタンを留める → 額の汗を拭く → 化粧と髪飾りを直す → レイを後ろで結ぶ → オラパがまた舞台へ出ていく
・・・結構、大変なのだ。

とにかく、汗の量が半端ではない。
ベタベタ、というより、びしょびしょなのだ。
で、その脱ぎ捨てた衣装はまたハンガーに掛けて、撤収しやすくする。
レイや髪飾りも使い終わったら収納しやすく並べておく。
なんてことをやっていたら、1時間のショウはあっという間で、舞台を袖から見る・・・という暇は全然ないのだ。
もちろん、クムとの打ち合わせや、クムが突然マイクを所望することにも対応する。直美ちゃんはクムの足のコンディションも整える。
実はかなり忙しいのである。
こういう裏方ができて、ようやく一人前とハワイでは言われている。これも修行の一つなのだ。

まだ、カヒキラウラニは良い。
男の子も女の子も一緒に着替える。男女それぞれがそれぞれの楽屋を使う、というハラウだと、裏方は走り回ることになる。
カヒキラウラニでは、若い男女でも、みんな下着姿で平気で一緒に着替える。時には男の子が女の子のファスナーを上げることもあるし、女の子が男の子のカマーベルトを締めることもある。私もカヒコの衣装の最後の「一締め」は男の子にやってもらっていたし、スカートのギャザーのより方を均一にするため、男の子が女の子のスカートの中に手を入れる、ということも当たり前になっている。
ハラウは「家族」なので、全然恥ずかしくないのだ。私もそうだった。

そして・・・
脱ぎ捨てた男の子達のカヒコの衣装をハンガーに掛けていた時のことだ。
山に脱ぎ捨てた衣装の下の方から、パンツが出てきた。
ズボン、という意味のパンツではない。
下着のパンツだ。

男の子は、衣装の関係でパンツをはかないことは、しばしばある。
カヒコでマロ(ふんどしのような物)を着るときなどは、お尻が露出するので、パンツははかない。私も小学生の男の子にマロをはかせたことは何度かあるので、着せ方は知っている。そういう衣装の時は、若い男性はさすがに恥ずかしいのか、自分たちで着替えている。
しかし、今回のショウでは、男の子はマロではない。
普通のズボンと長袖のビクトリア・ブラウスだ。
つまり、パンツを脱ぐ理由がないのだ。

しかし、そこに鎮座しているのは、まぎれもなく、男性の下着のパンツだ。
ちなみに、白の、メッシュの、ボクサータイプのパンツだ。
パンツとしての役割しか果たせないようなパンツだ。女性のような、ガードルの代替えとか、下着写り防止の下着ではない。
もしかして、あのフツーのズボンの衣装の下に、パンツをはいていない、ということか???

踊り終わって、男の子達が舞台からハケてきた。
「ねぇ、このパンツどうするの? 次の衣装の時に、はく?」
と尋ねた。
もしパンツをはくなら、こんなオバサンでも、一応、よそを向いていてあげないと可愛そうだ。
後で、「アンティー・サユリ(さゆりおばちゃん)に見られた」などと言われたくない。言わないだろうが。
すると、
「はかな~い! 最後まで、はかな~い!」
あ、そう・・・はかないんですか。
なんとなく、心配になることはないんだろうか。開放感がありすぎる、というか、落ち着かないと思うのだが。

そして、熱狂の渦の中、ショウは終わった。
はたして・・・この中の何人が、彼らがパンツをはいていなかったと気づいていただろうか。

ショウが終わって、夕食の時にこっそり聞いてみた。
「ねぇ、マロならわかるけどさぁ、普通のズボンでもパンツはかないの?」
・・・オバサンになると、恥ずかしくもなく聞ける。
「はいてる人もいるけど、僕たちははかないよ。だって、動きが制限されるから。」
なるほど。
いや、待て。
ブラジャーならば、無尽蔵には伸びないので(無尽蔵に伸びたら、ブラジャーの意味がない)、動きが制限されることはある。だから、私も社会人剣道をやっていた時はブラジャーはつけなかった。そして、そういう人がほとんどだった。
しかし、コトは、パンツである。
パンツは伸びる。しかも、ハワイで売られている、よく伸びるメッシュタイプのボクサーパンツだ。これの、どこが、「動きが制限される」のか???

ついでに、クムにも聞いてみた。
クム曰く、「元々、パンツはハワイにはなかったから、はかずに踊るのが自然だ」とのこと。
こう言われると、実によくわかる。
実は、日本の武道でも、子供のうちはともかく、大人はほとんどパンツをはかないのだ。
柔道も、剣道も、空手も、合気道も、弓道も。
剣道の場合、女性はみんなパンツをはいていたが、柔道女子はパンツをはかない人がちらほらいた記憶がある。私の弟も剣道五段だが、彼は中学生くらいから、袴の下はパンツをはいていなかった。
元々、日本にもパンツなるものは、なかったからだ。女性は腰巻き、男性はふんどしだ。ちなみに私の祖母は死ぬまでパンツをはかず、腰巻きで生活していた。
その話をクムにかいつまんで話すと、「伝統文化では、元々の形でやるのが自然なんだろうね」と言われた。

だが、しかし。
私はやはりパンツを脱ぎ捨てる気にはなれない。
剣道の時も、パンツはいつもはいていた。はいていないと、落ち着かない。確かに弟は、「はかないと、動きやすいよ~」と言っていたが、私はイヤだった。
フラでは、特にイヤだ。
パンツもはかずにドレスを着るとか、パウをはくなど、考えられない。現代の日本人はみんなそうだと思う。
ちなみに、ハワイの女の子のオラパはパンツをはいている。
Tバックとボクサータイプが多かったように思う。

「パンツの謎」は解明された。
賛同・実践するかどうかは別として、「なるほどなぁ・・・」と思った。
次回、舞台裏のお手伝いの時は、脱ぎ捨てられたパンツを見てびっくりすることはないだろう。
気づかないフリもできそうだ。
これも伝統文化の原型なのだと、理解しよう!






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