「競技会」は「勝負事」ではない

日本時間で昨日の夜8時過ぎにメリーモナーク2017の全日程が終了した。
あ~、終わっちゃったな、と思っている人も多いだろう。
私は、ほっとした、と思っている。
今年は父の主治医や施設からの連絡はなく、義弟からの緊急電話もなく、ちょいちょいメールの連絡は入ったが、メリーモナークに集中できた。
こんな年は珍しい。

メリーモナークは「コンペティション」だから、入賞するハラウとそうでないハラウがある。
日本でもPCの前で一喜一憂した方も多かっただろうと思う。
日本人や西洋人(変な言い方だが)は、昔から「競う」ことが好きだ。出来不出来やタイムや長さなどの順位を付けるのが好きだ。
しかし、ハワイアンはそうではない。
みんなそれぞれ、ベストを尽くし、競技会に向かって努力する。
中には、というか、結構多いのだが、「それはウェスタン(西洋的)な考え方だ」と、コンペティションには一切参加しないハラウもある。それはそれで、理解できる。なるほど、と思う。

1位だったから良くて、入賞できなかったから良くないのか、と言えば、それは絶対に違う。
なにしろ、人間がやった演技を、人間が審査するのだ。
どんなに公平に審査しても、そこには、「好み」「傾向」が伴う。それは当たり前だ。
「好み」はわかるとして、「傾向」とは。
どこのハラウも、「今年はウチはこれをやりますよ」という発表はしない。そして、エントリーした曲がかぶると、後でフェイスシートを提出したハラウが曲を変更しなければならない。どのハラウも、その年のテーマやメレを決めるのは、かなり早い段階になる。たぶん、夏には構想を練っているだろう、と思う。
そんな風に決めたテーマが、たまたま、かぶることはある。
曲が同じでない限り、テーマが一緒でもそのままエントリーは通る。結果、同じテーマの曲が何度か出てきたり、同じ楽器ものが出てきたり、似たような衣装だらけになったりする。
・・・どのクムも、考えていることは同じなのか・・・?と思うこともある。

今年で言えば、
・カネ・カヒコのウリウリが多かった。
前半4ハラウが手踊り、その後の5ハラウは全部ウリウリだった。ウリウリが5ハラウ、というのは確かに多いが、前半と後半でばっちり分かれた。これがもし、手踊りとウリウリが混ざった順番だと、かなり印象が変わる。ジャッジや観客は、「あ~。またウリウリか」と思うだろう。こうなると、よほど目を引く「何か」があったハラウに点数が乗る。結果、ティリーフを付けたウリウリで古代物をやったカヴァイリウラーや、ものすごく速いテンポで最後までエナジーたっぷりに踊ったカヒキラウラニが入賞した。
では他のウリウリをやったハラウは良くなかったのか、と言えばそうではない。世代交代が進んだらしきイ・カ・ヴェーキウは正確なウリウリだったし、ケクアオカラーアウアライリアヒの大きなウリウリは印象的だった。ケ・カイ・オ・カヒキは実に正確で減点の少ない演技だった。
同じ楽器物が出てくると、印象の強いものに、どうしても点数がついてしまう。

・ワヒネ・アウアナのドレスが赤が多く、オフショルダードレスとホロクーが多かった。
衣装は、ある程度「流行」がある。髪飾りの付け方も変わっていくし、ココの位置も変わる。
今年で言えば、オフショルダードレスのオンパレードになった。また近年ではせいぜい1~2ハラウしか着ないホロクーが多かった。ホロクーは踊りにくいので、これをうまく使いこなすと衣装点や技術点が上がる。それを視野に入れてホロクーを選んだりするのだが、これだけホロクーが多くなると、「ホロクーがホロクーたる加点」が抑えられてしまう。
また、ウェブのコメント欄には、「今年は赤をテーマにしないといけないのか!?」というコメントを入れる人もあったくらい、赤い衣装が多かった。そうなると、バランスの関係で、使うレイや髪飾りも似たような感じになるのは否めない。印象に残る衣装はたくさんあったが、なぜか赤の衣装は印象に残っていない。結果、赤い衣装を着ていたハラウのフラの印象も薄くなってしまう。入賞しなかったけど、かなり素晴らしい演技だった赤衣装のハラウがある。偶然とはいえ、実にもったいないことだ。
また、ココの位置が年々高くなっている。その反面、クラシカルな印象を与えるためにココの位置をぐっと下げるハラウも多かった。髪飾りは大きな物を使うハラウが多かったように思う。
その「流行」に乗るのか、あくまで「独自」でいくのか、なかなか選択の難しいところだ。
もちろん、衣装選びはクムのセンスなのだが、あまり重なってしまうと損をしたりする。

・アウアナが「場所の歌」オンパレードになった。
特に後半、ずっと「場所」をテーマにしたハラウが続いた。
そうなると、同じような「場所の歌」でも、ちょっと目先の変わったものに印象が残る。ヒヴァ・ヴォーンのハラウは「ホテルのオープン」がテーマで、ものすごく移動をさせた。ヒイアカイナーマカレフアは同じ隊形のまま大きく移動させ、印象の残るポーズをした。同じようなテーマだと、「印象に残る何か」があると点数が乗る。当たり前だが。

・演技順
これはものすごく関係する。
前回大会を含め、ここ数年の成績によって演技順は決定するのだが、これは大いに関係する。
例えば・・・同じ楽器が続く、とか、同じ色の衣装が続く、とか。こういうことがあると、どうしても後のハラウに点数が乗っているようである。もちろん、そうばかりとは言えないが、そうなっている例が多い。
また、全体に、後半に出場するハラウが多く入賞する。これは毎年同じだ。
よく、「後半に出ないと入賞しないんですか?」と聞かれるが、これは、そうでもない。結果的には後半のハラウが多く入賞するが、それはここ数年の成績が良ければ後半に出場するので、大幅な世代交代がなければ、その年も良い演技ができる、ということだ。
後半に出場する、前半に出場する、ということではなく、「その前後」が関係するのだ。

・世代交代が進んでいる
どのハラウも毎年世代交代しているのだが、今年は特にそれが目立った。
「あ、あの人がいない」「この人は今年からは踊らずにホオパアなのね」と感じることが多かった。世代交代期は本当に難しい。クムが亡くなることもあるし、大幅にメンバーが辞めてしまうこともある。なぜか、一斉に妊娠する年もある。だから、同じ力を維持するというのは本当に難しいのだ。
ものすごく人材の豊富なハラウであっても、世代交代はやはり難しい。ここをうまくつないだハラウもあれば、そうでないハラウもある。
「今は我慢の時」というハラウが多かったように思う。
メンバーの年齢を読み、「あと2~3年すると、このハラウはぐっと変わってくるな」と予想するのも、なかなか興味深いのだ。(これは結構、当たる)

・キノイキ・ケカウリケをテーマにしたハラウが多かった。
キノイキ・ケカウリケとは、カピオラニ女王の末妹。カウアイ島の王カウムアリイの孫で、ハワイ島ヒロの知事の妻。この方やこの方の子孫をテーマにしたハラウがかなり多かった。

・アウアナでオラパが歌う演出が多かった。
これは去年ぐらいから多くなっている。はやっているのかな。
「あ、また合唱してる」と感じることが多かった。これだけ多いと、印象が薄くなってしまう。

また、これは、「そんなことはないよ」と言われるが、私自身が長年見てきた中で感じるのは、
同じ楽器物は入賞していない
ということだ。
例えば、イプで1つのハラウが入賞すると、他にイプを使ったハラウは入賞していない、というようなことだ。これは偶然なのかもしれないし、私の気のせいかもしれない。
でも、現に、毎年そうなっている。決してその2つのハラウのイプに明らかな差があったわけではなく、双方素晴らしい演技だったのに、1ハラウしか入賞していない。
偶然なのか、メリーモナークの不文律なのか・・・?と思うこともある。
カネのカヒコのように、ウリウリが半数以上を占めると、そんなことも言ってられないだろうが、こんなことは珍しい。大抵は、入賞したハラウの楽器はかぶっていない。

こんな風に、入賞した、しなかった、と一喜一憂するのだが、私自身は、実はあまり気にしていない。
もちろん自分が所属しているカヒキラウラニが良い成績だと嬉しいのだが、それだけではないのだ。
メリーモナークは、成績を競うものではあるのだが、それに出場するまでの過程の方がずっとずっとずっと大切だ。
ものすごく苦しいし、こんなお気楽主義の私でさえ、毎晩悪夢を見たし、血尿も出た。それを乗り越えてあの舞台に立つ。なんと名誉なことか。
演技が終わると、「入賞なんか、どうでもいい」と私は思った。
もう、十分だ、と。
あんなにフラに打ち込み、他のすべてをうっちゃらかして、踊るか食べるか寝るかしかなかった日々。それが終わるのだ。入賞するかしかいかなど、どうでもいい、と思うのだ。
一晩明けて、出場した多くのオラパはきっと、そう思っているだろう。

「競技会」は「勝負事」ではない。
その過程も含んで、みんなで1つの物を目指す。それは「賞」ではなく、「ベストな演技」だ。
入賞しなかったから良くなかった、というわけではない。
絶対に、それぞれ得たものがあるはずなのだ。
それが次につながる。次のメリーモナークだったり、次の課題曲であったり、次の人生だったり。
毎年メリーモナークを見ていると、本当にそう思う。

来年は、どんなメリーモナークになるだろうか。
フラはいつか踊れなくなる日が来るかもしれないが、見ることはずっとできる。
来年もぜひ、楽しませていただきたいものだ。

この記事へのコメント

  • emiy

    解説、ありがとうございました。
    そして長い時間お疲れ様でした。
    また来年度に向けて始まるのだと思うと・・・。
    私もささやかですが自分なりに、フラを楽しみたいと思います。
    小笠原先生、ありがとうございます。

    2017年04月24日 09:10
  • poorlobin

    はじめまして。
    長く素人観戦者としてメリーモナークを見ております。今年になって「入賞傾向が不思議」と気になり始め、検索したところこちらがヒットし、おじゃましました。
    小笠原先生の柔らかい言葉遣い、大変丁寧な解説と順序立った解説でとてもわかりやすく、内容も事の次第もうなづくことばかりでした。
    過去の記事も一気に読みました。今まで読んでいなかったことが悔やまれます。
    これからも末永くのご活躍をお祈りいたします。ありがとうございました。
    2017年05月03日 17:14