バックベントのコツ

先日、ケロちゃんさんからコメントをいただきました。ありがとうございます!
なかなかご質問の「バックベント」について書く時間が取れず、遅くなりましたが、今日はそのバックベントのコツについてを書きます。

バックベントというのは、立ち膝になって膝から上のまっすぐにした身体を後へ倒す、というものです。
普通は肩を床から1インチの位置まで下げますが、ぐるりと身体を回すものもあります。
大抵はメリーモナークでどこかのハラウがやっていますね。我がカヒキラウラニでも必ずと言って良いほど入れています。最高難度の技の一つです。
私も左膝の靱帯を切るまではよくやっていました。それ以来、「また靱帯が伸びちゃうかも・・・」と思い、やっていませんが、私にとってはかなり得意な技だったので、コツはよく知っています。

バックベントに必要なのは、何と言っても体幹筋肉です。
後へ倒す身体をいかにまっすぐに倒すかが、「美しいバックベント」になるかどうかの分かれ道。
よく、「どこに力を入れたらできますか?」と尋ねられますが、腹筋と思っている人が大半のようです。腹筋なんぞ、全然関係ありません。
これがコツその1です。
力を入れる場所は背中とお尻です。
一番力を込めるのがお尻。
文章に書くとおかしな感じがするかもしれませんが、
お尻の穴をつぼめる感じ
に力を入れます。要するに、お尻の筋肉をしっかりと締めることが必要です。ダラダラの尻(!)では絶対にできません。日本人はお尻の肉が薄いので、かなり大変かもしれません。ハワイの人はそのDNAから「出っ尻」なので、体重の重い人でも案外簡単にできます。ちなみに私もかなりの「出っ尻」なので、初心者の頃からバックベントだけはなぜかできました。(もちろん、かなり練習しましたが)
日本人はお尻の肉が薄いので、確かに大変です。でも、体重も少ないので、お尻の力の入れ方がわかればハードルはかなり下がります。

一方、背中は、
倒す身体をまっすぐに保つために力を入れる
のが必要です。
全体重が背中にかかるわけですから、それをまっすぐに保つには相当しっかりとした背中の筋肉が必要になります。
そう。実は、腹筋なんぞ、全く使っていません。
バックベントをする時に、よく腹筋に力を込めている人を見ますが、そういう人は背中が曲がっていて美しくありません。  
ぐにゃ~っと床に倒れていくので、迫力がありません。
背中を真っ直ぐに保つよう、ウエストより少し上の背中にぐっと力を入れます。
背中を鍛えるのは大変ですが、常に姿勢を美しくする(立っている時も座っている時も)クセをつけるとかなり改善されます。また、カオ(ハラウによって呼び名は違うけど・・・)を踏む時に、おへその位置を変えない、ずっと同じ位置におへそを置いたまま、おへそも一緒に揺れてしまわないカオを心がけると背中は鍛えることができます。タンスのヘリ(カド)や、お風呂なんかについてる縦の手すりを持って、身体の中心を動かさないようにしてカオを踏む練習をすると良いです。背中だけが働くカオになり、大腰筋が鍛えられるので、これができる人は大抵はバックベントができます。

コツその2は、膝頭の開き方です。
立ち膝になった時に、
右膝と左膝の間を大きく取る
のがコツです。
ちょうど、アルファベットの「Y」の逆にした感じですね。なるべく、膝と膝の間を大きく開けます。
座ったまま上半身を回すローリングも、座った時に膝と膝の間を大きく開けると簡単にできます。
開けすぎると力が入らなくなるし、閉じすぎると股とお尻に力が入らなくなるので、膝と膝の間の距離は人それぞれです。身長差や体格差によってずいぶん違います。
膝を開いて少し後に倒れてみて、お尻に一番力の入りやすい距離を見つけてください。

コツその3は、足の甲です。
上がってくる時、足の甲にものすごく力を入れます。
バックベントは、
下がる時は背中とお尻
上がる時は背中とお尻と足の甲

に力を入れます。
上がる時、足の甲で床をぐ~っと押して上がります。
全体重を足の甲で持ち上げる感じです。
すね全体で押して上がる、という人もありますが、そういうバックベントは上半身が曲がったりします。腰で折れてしまったりします。
「面」で押すのではなく、足の甲という「点」で押すと、力が一気にかかり、美しいバックベントができます。
ちなみに私の両足の足の甲は、薄茶のシミになっています。これは何度もバックベントをしてきて、足の甲の皮が何度もめくれては出血し・・・を繰り返したからです。ハワイでもこういう人は多いです。ポリネシア系の人(ネイティブ・ハワイアンの血が入っている人)はそのDNAから皮が厚いのでこういうことは少ないですが、アジア系や白人系の人は皮が薄いので、床にこすれて出血したり、何度も押しつけたことにより皮がそこだけ厚くなって変色したりします。

コツその4は、気持ち
最後はソレかい!! と言われそうですが、案外関係しています。
よく、「曲がれ」と念じると誰でもスプーンが曲がるとか、「離さない」と念じると指で作った輪っかが離れない、という話を聞きますが、そのようなものです。
要するに、「集中力」がとても大切です。
倒れていく時に、「絶対に上がってくるぞ」と思いながら倒れる
というのが必要です。
これは、カヒキラウラニのフラ・シスターも同じ事を言っていたので、たぶん間違ってないと思います。
倒れる時に、「上がってくること」を想定しながら倒れるのです。
なんとな~く倒れてみる・・・というのは、集中力が出ません。
美しく、真っ直ぐになった身体が上がってくる・・・というのをイメージしながら倒れていきます。上がる時にイメージするのではなく、倒れる時にイメージします。そうすると、集中力が切れません。
倒れて、一番床に近い位置に顔がある時に、ふっと気持ちが切れると、絶対に上がってこられません。これは、私もそうです。
全盛期の頃、まず私はバックベントで失敗することはありませんでした。舞台では当たり前ですが百発百中です。でも、練習中には100回やると2回くらいは失敗しました。上がってこられなかったのです。一番倒れた状態にある時、気持ちがふっと切れたり、他事が頭をかすめたりすると、失敗してしまいます。
倒れる時から、ちゃんと集中していきましょう。
「は?」と思われるかもしれませんが、髪はお団子でないほうが良いです。
私が失敗する時のほとんどは、髪がお団子になっていた時でした。
これは、身体(肩)は床から1インチの位置を保っているのに(床に肩が触っていない)、お団子にまとめた髪だけが床についてしまい、その瞬間にトンという軽い衝撃があり、集中力が切れてしまうのです。
そんなことで?と思われるかもしれませんが、そんなもんなのです。人間の集中力なんぞ、簡単に切れるものなのです。

バックベントのように難しい技は、
心技体
が揃わないと、なかなかできないものです。
体幹がしっかりしていて、ちゃんと必要な所にぐっと力が入る身体
イメージする力と集中力

が揃わないと、バックベントという技は難しいです。どちらかが欠けていても難しいです。

私はまだバックベントができなかった頃、練習する時は、後に座布団くらいのクッション(もちろん、座布団でも良い)をたくさん敷き、最初はたくさんの座布団を重ね、だんだん減らしていきました。
倒れては・・・ど~んとクッションに倒れこみ・・・を繰り返し、だんだんクッションの数を減らして、最後はクッションなしで、床から1インチまで下げ、そこで10秒キープできるようになりました。
次は、クッションに倒れた状態から上がる練習をしました。しかし、一番倒れた状態で10秒キープできる力があれば、これは簡単にできました。上がる時に、いかに足の甲に力を入れるのか、身体を真っ直ぐにしたまま上がるための練習にやっていたような感じです。
こんな地味な練習を繰り返し、できるようになりました。

当時はまだ、こんな私も若かった(!)ので、実は1週間くらいでできるようになったのですが、筋肉量も大きく関係しているように思いました。
私を見たことのある方はよくご存知ですが、私はかなり大きいです。
背も高い(170センチ超え)のですが、実弟に言わせると、
「おねえは、背が高い、というよりも、大きい」
なので、横幅も相当あります。カヒキラウラニではまだ「普通より細い」に分類されますが、日本だと「かなり大きい」になります。ちなみにクムは、「あと、5ポンドは体重を増やすともっと良い」と私に言いますが、それはカンベンしてもらいたい。ハワイならいざしらず、日本だと服選びに困る。
・・・という大きい私なのだが、ダラダラに太っているわけではない。子供の頃からの生粋(!)の筋肉質+出っ尻なのだ。
こういう人は、バックベントのような力業は得意だと思う。
ハワイでも、ジュニアのクラスでバックベントの練習をしているのを見たことがあるが、細い子供よりも、胴体のしっかりした筋肉質で太めの子供の方が、はるかに早く習得していました。

年齢を重ねる毎に、心は整っていきます。
必要な時のみ(!)ではあるが、恐ろしいほどの集中力を見せるのは、必ずクプナ世代です。
一方、身体の方は残念ながら衰えていきます。これは当たり前で、仕方のないことです。
でも、私はレッスンでいつも言うのだけど、「必要な場所に、必要な筋肉さえあればよい」なのです。全身を筋肉の鎧で覆う必要なんぞ、ありません。それはワヒネ世代に任せておけばよいのです。
フラに必要なのは、お尻・背中・太股・肩・指先の筋肉です。
ちなみに私はいつも「腹筋なんぞ、必要なし!」と言っているが、私については腹筋運動は一度もできない。一度も上がってこられないのだ。でも、フラはできる。バックベントもできるしローリングするバックベントもできる。
必要な筋肉は、フラの中だけでじゅうぶん鍛えられます。
ただ、ちょこっと目先を変えるだけでじゅうぶんです。おへそを動かさないカオを踏んでるだけで、背中はぐっと硬くなり、筋肉が充実します。ダウンステップをちゃんと踏むだけで太股は鍛えられます。

クプナ世代(45歳以上)がバックベントに挑戦するのは大変です。
ハワイでは、コンペの選手を引退すると、バックベントなど、絶対にやりません。ショウ・ダンサーであれば、やる時もありますが、まずはやらないものです。
コンペを卒業すると、次は「技より美しさ」を求めるようになるのです。まだクプナになっていない年齢でも、コンペを卒業すると、「いかにダウンするか」「いかに難しい技を見せるか」よりも、「もっと美しく」「もっと優雅に」「年齢に合った優しさやまろみ」に移行するのが一般的です。
ウエヘ満載の曲から、指先の美しさを求められる曲へ移行していきます。
「わぁ~!すごいね!」から、「わぁ~!きれいだね!」に移行していくのです。
でも、日本はそうではない。
日本ではフラを始める年齢が遅いため、クプナ世代であるのにハードな曲を練習することが多いです。クプナなのにバックベントをさせているのを見たこともあります。
それって、どうなのかな・・・と思わないでもない。ハワイでは絶対にありえないことなのだ。
クプナでもハードなフラを、バックベントを、というのを否定するつもりは毛頭ないのだけれど、年齢に合ったフラの方が素敵なんじゃないか、と私は思う。

そこで・・・
クプナ世代でバックベントに挑戦するならば・・・
重点を少し変えてみるのも一つだと思います。
ワヒネ世代ならば、「いかに床に近い位置まで倒れ、そこでキープしてから上がってくるか」を重要視します。
それはクプナ世代にはとても難しいです。
であるならば・・・
「背中をいかにまっすぐに、美しく倒れて上がってくるか」を重要視し、「床にいかに近い位置で」のくくりをはずす、というのも一つです。
たとえ、床から1インチの位置まで倒れられても、背中が曲がっていたら、それは美しくはありません。
たとえ、床から30センチ離れた位置までしか倒れられなくても、背中が真っ直ぐです~っと倒れて上がってきたら、私はその方がずっとずっと美しいと思います。

「やってみたい!」の気持ちは私も本当によくわかっています。私にも、いつもそういう思いがあります。
でもその一方、「できんかもしれん・・・」という気持ちも同居しています。
そして、先生としての立場からすると、「踊る側」だけでなく「見る側」の気持ちも尊重したいところです。
昔、名古屋ではないある地区で、どう見ても全員が80歳近いというグループが、1曲全部がウエヘという曲を踊っていたのを見たことがあります。
その時、私は「ああ・・・大変そうだな」という印象を強く持ちました。
「頑張っているなぁ」「素敵だなぁ」とは、思えませんでした。
フラって、年齢に合わせる方が格好良いなぁ、と思いました。
でも、それが自分、となると、なかなかそうは思いにくい。いつまでも頑張りたいし、いつまでも若いつもり(!)なのである・・・。
でも、膝の靱帯が切れて、今までのようなハードなものが自分の満足いくようには踊れなくなってから、ちょっと考えが変わったように思います。
今の自分のベストを
その年齢に合わせた技を

になってきました。
バックベントだって、全盛期のようなものでなくても、いいんじゃないか?と思えるようになってきました。

バックベントはフラでは最高難度の技です。
できれば、嬉しいし、達成感もあります。
でも、フラはバックベントの出来不出来ばかりではありません。
挑戦してみて、もしもできなくても、どうということはありません。気に病む必要はないのです。
クプナ世代でバックベントに挑戦する方は、それくらいのおおらかさで、焦らず、時間をかけて(長期間に渡って)練習していきましょう。
たとえ結果として、バックベントができなくても、お尻や背中についた筋肉や集中力はこれからのフラ人生を大きく豊かにしてくれます。

ケロちゃんさんのバックベントができますように!
コツがつかめるといいなぁ・・・と願っていますよ~!









この記事へのコメント

  • ケロちゃん

    こんなに素晴らしい記事を書いてくださり、感動しました。
    ありがとうございました!
    前腿にばかり負荷がかかり、まだまだお尻と背中が
    弱いのだと思いました。
    無理なく少しずつ練習していこうと思います。(^・^)
    今度ロールについてもコツを教えていただけると嬉しいです。
    2017年02月11日 16:11
  • づぼら

    フラ歴6年のアラカンです。
    バックベントなど当然夢にも思いませんが、最近お腹はへこまないけどヒップラインにはひそかに自信を感じてきてました。
    で、この記事読ませていただいて、なるほどと思い、入浴ついでに鏡でカオ見たら・・・おお、おへそ動いてない(素人目には)。
    私の先生、動きはしっかりチェックしてくださいますが、筋肉の使い方の指導とかはありません。で、ネットであれこれ検索しては試行錯誤しています。以前、フラは背中の筋肉が肝心と書いてくださったのも、目からウロコでした。アミやオニウのコツとかも検索しているのですが・・・。
    筋肉や身体の使い方、バレエのための本はありますが、フラのためのものはない。出版していただけたら絶対買います!ぜひ!!
    2017年02月12日 02:01
  • ケロちゃん

    >づぼらさま
    同感です。何年やっていても、表面的に真似ているだけで
    正しい筋肉や身体の使い方ができていないように思います。

    >先生!ぜひ迷えるフラダンサーのための本の出版、ご指導お願いします。
    2017年02月13日 00:04
  • プルシャンブルー

    腹筋いらないって、目から鱗です!
    あの時に知っていたらな…
    2017年02月13日 18:27