夫の手術

重篤な手術ではない。
夫は眼瞼下垂なのだ。
私が気がついたのは2年くらい前だった。
私と付き合いの長い生徒さんはご存知だが、元々、夫はびっくりするほど大きい目をしている。そして、これまたふか~い二重まぶたなのだ。
視力が悪いため、かなり分厚いレンズの眼鏡をかけていて、その眼鏡をかけると目が小さく見える。だから案外、夫の目がびっくりするほど大きな目だとは知らない人も多い。
それが、2年くらい前から、二重の幅が狭くなり、丸い「びっくり眼」がだんだん細くなってきていた。頭痛や肩こり、おでこのシワまで出現し、眼瞼下垂独特の様相になってきた。
眼瞼下垂の手術を勧めたものの、「絶対にやだ」と言って聞かなかったので、私も手術を受けさせることを諦めていた。

そんなある時、生徒さんのお一人が眼瞼下垂の手術をされた。
それが! 驚くほど美しいのだ!
今まで、眼瞼下垂の手術を受けられた人に会ったことがあったが、どこか不自然だったり、左右が不揃いだったりした。それが、その生徒さんは、ものすごく自然で、イイ感じだった。
早速、その生徒さんに病院を教えてもらい、予約を取った。
初診まで3ヶ月待ち。
手術までは更に2ヶ月半待ち。
満を持しての手術となった。
ここ2週間は、亡父と母の諸手続や何やらで忙しかったが、せっかく取れた手術の予約である。この機は逃せない。

初診の時、医師は夫のまぶたを親指で持ち上げながら、こう言った。
「う~ん、まぶたの筋肉はまだしっかりあるね~ でも、たるみがひどいね~」
夫は「たるみがひどい」には憤慨していた。しかし、残念ながらそれは事実なのだよ、夫よ。認めたまえ。
そして夫は「イタイこと」が大嫌いだ。血なんぞが出ようものなら、大騒ぎだ。
昨夜から、「いやだな~」「痛いんだろうな~」「血がどばっと出るんかな~」などと独りごちていた。
そして今日、手術室に入る前に、私にこう言った。
「ワシ(夫の一人称はワシ)は、借金はないからな。ワシにもし何かあったら、例の公正証書の遺言状に従ってやってくれ」
・・・死ぬ気、満々のようである。
何をトロいこと言ってんの、呼ばれてるんだから、早く行きなさい!と私に促され、夫はシブシブ、手術室に入っていった。

手術は2時間半くらいで終わった。
手術室から出てきた夫は、両目のまぶたにガーゼを貼り付けられていた。
ほそ~く目を開けることはできるらしく、一応、少しは見えるらしい。もちろん視力がひどく悪いので、眼鏡は必須だが。
車に乗せて帰宅すると、夫は大いびきで寝てしまった。
人生初の手術。
局部麻酔だからあまり身体に影響はないはずなのだが、心情的には「影響アリアリ」なのだろう。そしてずいぶん疲れているようだ。
あたかも、「かわいそうなワシ」を全身で表現しているような・・・。

何しろ、両目のまぶたにガーゼが貼り付けられて、ほとんど目を開けていられない状態なので、何もすることがない。
テレビもよく見えないし、本もパソコンもダメ。
仕方なく、テレビの音だけ聞いている。
確かに・・・ちょっとかわいそうだ。

今は痛みはあまりないらしいが、ガーゼがうっとおしいので、目を開けていられない、と言っている。
ガーゼは明日の午後にはがす。
それまでの辛抱なのだよ、夫よ。我慢したまえ。
今夜は早めにベッドに入っていただこう。
「痛くて、寝れんかもしれん」
と夫は言う。
何を言うか。帰宅後、ほぼほぼ寝続けていたではないか。
母はその言葉を聞いて、
「ど~の~く~ち~が 言~う~!」
と笑っていた。夫の大いびきは1階まで響く。寝ていたことは、1階にいる母にもバレバレなのだ。
目をつむって、最初のいびきが聞こえるまで、30秒もかからない。しゃべりながら突然いびきをかいて寝てしまうこともある。
寝付きの悪い私から見たら、実にうらやましい。
何はともあれ、早く良くなるといいなぁ~


posted by プアアカハイ at 22:04愛知 ☁Comment(0)日記