故宮博物院へ

台湾の故宮博物院は前からずっと、ゆっくり見たかった所だ。
私は中国そのものではなく、中国の歴史がとても好きだ。
そもそも、私が中国の歴史に興味を持ったのは・・・いったい、いつのことだったろう。
一番最初は、たぶん「西太后」という映画を見た時だと思う。これは小学生くらいの頃なので、大して覚えてはいないのだが、とにかく強烈な印象だった。あの映画は西太后がかなりデフォルメされている、と思うが、その当時の私は「すごい!」としか思わなかった。
時は過ぎ・・・中学や高校で世界史や日本史には度々、中国が出てきた。面白いなぁ、とは思ったが、そのまま大して深く学ぼうとは思わなかった。
そしてまたまた時は過ぎ・・・20歳くらいの時、「ラスト・エンペラー」という映画を見た。「う~ん、これは・・・」と、心の琴線に触れた。
映画の登場人物レジナルド・ジョンストンの書いた「紫禁城の黄昏」を皮切りに、三国志から則天武后もの、はたまた宋姉妹ものも、軒並み読みあさった。
読んでいて、気がついた。
中国の歴史の本って、漢字だらけだ。読みにくい。ものすごく小さな字で中国語読みのルビがカタカナで振ってあるが、小さな字を読むのが面倒くさい。
そうだ! 中国語を勉強しよう!
・・・という具合で、私の中国語学校通いが始まったのである。
今から、25~6年も前の話だ。

フラを学ぶようになった今でも、テレビで中国の歴史ものをやっていると、絶対に見ている。中国の歴史、特に清王朝の乾隆帝のあたりの本は大好きで、本屋さんで新書を見つけると、つい買ってしまう。
そんな私にとって、故宮博物院は憧れの場所なのである。

台湾の故宮博物院で一番有名なのが・・・
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コレと、
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コレ。
そう、翡翠で作られた「白菜」と加工技術のリアルさに驚く「肉石」である。
ちなみにこれらの写真は内緒で撮ったわけではない。この博物館ではフラッシュさえ使わなければ、撮影しても良いのだ。(太っ腹!)
この「白菜」と「肉石」の周囲は一日中、見学者の途絶えることはない。人の頭の後ろからのぞき込むように見なければならない。
・・・が、朝8時30分の開館と同時に「白菜」「肉石」に直行すれば、結構じっくり見られる。私と夫は開館してすぐに「白菜」へ行ったので、かぶりつきで見ることができた。

一番有名なのはこの2つなのだが、私が今回、ものすごく見たかったのはこの2点ではない。
私が見たかったのはコレだ。
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これは象牙で作られている。一番上の鎖部分から一番下の細工までが、1本の象牙を彫って作られている。で、真ん中の玉の中にはまた玉が入っている。
写真を見た母は、「どうやって中の玉を入れたんかねぇ」と言っていたが、玉を中に入れたのではなく、彫りながら、中の玉をまた彫り、そのまた中の玉を彫り・・・というものなのだ。これは中に16個の玉が入っていて、一番外の玉と合わせて17個の玉でできている。
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どうやら、24個の玉でできたものもあるらしい。・・・気が遠くなる。
この作品は祖父・父・子と、3世代に渡って作られた。老眼になったら、できんなぁ。それでも100年くらいはかかるかなぁ。

これも見たかった物の一つ。
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これもよくガイドブックに載っているが、白磁の「枕」である。
カワイイけど・・・陶器の枕とは、なんとも首と後頭部が痛そうだ。うつ伏せで寝ることなんぞ、絶対にできんだろう。

清王朝6代乾隆帝の命により作られた品々も、非常に興味深い。
この頃は国がとても安定し、外国からのイエズス会士の技術者が中国に入ってきて、新しい技術・芸術が中国にもたらされた。だから、ものすごく高価で、芸術性が高く、技術も素晴らしい。
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これはその時代の最高傑作と言われているらしい。
壺の中に、もう一つ円筒形の壺が入っている。外の壺には窓が開いていて、中の壺を回すと金魚が窓から見える。
なんともはや、優雅な逸品だ。
これは芸術作品で、「使うための物」ではないのだが、「使うための物」も、非常に芸術性が高い。

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これは「お椀」。「使うための物」だ。
この絵付けをしたのは、ジョゼッペ・カスティリョーネ。私はこの人についての本も読んだのだが、この人はベネツィア出身のイエズス会士だ。まだ20代の頃、イエズス会に命じられ、遠い中国へやって来た。恋人とも友人とも別れ、かのヴィヴァルディ(!)にも思いとどまるよう説得されたが、彼はイエズス会の命に従った。渡航の目的はもちろん、布教だ。キリスト教には興味のなかった清王朝だったが、彼らの持つ素晴らしい技術を取り入れるため、布教を許した、とされている。そう言えば、義和団の乱の写真で、焼かれた教会が写っていた。きっと教会を建てて、そこで布教の傍ら、芸術作品を作っていたのだろうなぁ。
彼が中国に渡ったのは清王朝4代康熙帝の頃だから、4代・5代・6代と、3代の王に仕えたことになる。カスティリョーネの本業は画家だが、ガラスの技術も高かったらしい。
このお椀は当代の王に捧げる物だから中国的な図柄だが、ヨーロッパの香りを感じる作品だ。彼の作品を見ることが出来て、本当に感激した。

テレビドラマや映画でよく見る、「飾り爪」。
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金のすかし細工や、翡翠、玉、真珠が使われている。
王家の貴婦人達が、薬指と小指の爪にこれをはめる。だから2本セットになっている。
蓋付きのお茶碗で中国茶を飲む貴婦人が、優雅に、薬指と小指を使わずに、残り3本の指で蓋をずらしている。確かに、こんな飾り爪が付いていたら、その2本の指は絶対に使えないだろうなぁ。
ちなみに「飾り爪」は、満民族特有の物なので、清王朝の時代の物しか、故宮博物館にはない。

同じく、清王朝時代のかんざし。
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翡翠や玉、瑪瑙、真珠、ルビーやサファイアも使われている。
これを王家の貴婦人達が身につけていた(しかも1人1個ではない、何個も身につける)ことを考えると・・・清王朝末期には軍備費に苦労していたのがわかるような・・・

これも清王朝時代の笄(こうがい)。日本だと笄はよく吉原の花魁が髪にかんざしのように挿していたが、清王朝ではそういう使い方ではない。
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清王朝は満民族なので、髪型は両把頭と言われる髪型で、この笄にてっぺんの髪を巻き付けて左右に大きく張り出す。後頭部はツバメの尻尾みたいな髷をいくつか作る。なんともけったいな髪型だ。こういうやつ→両把頭
私の髪の長さがあれば、できるかもしれんが。

清王朝の皇帝や高官の頂戴。
「頂戴」とは、「コレちょうだい!」の「ちょうだい」ではない。皇帝や高官や高位の宦官の帽子のてっぺんに付ける飾り。
確かに・・・漢字で書くと、「頂(いただき・頂上)に戴く(いただく・のせる)」だなぁ。
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清王朝の如意。
公式の場で持つ棒のこと。日本では笏と呼び、お札になっていた聖徳太子が手に持っていた。(アレは縦型)
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聖徳太子が持っていたのは木製っぽかったが、これは純金だ。豪華すぎる・・・。

中国の歴史年表を見ると、国の名前が次々と変わっていることに気づく。
豊臣秀吉が攻めていたのは「明」だったし、聖徳太子の頃は「隋」、阿倍仲麻呂や李白は「唐」、神風が吹いた時は「元」。
前の王朝が倒れて、次の王朝が始まる。日本にはないことだ。
中国は広いから、次の王朝が王府北京近辺の民族とは限らない。
モンゴル族だったこともあるし、満民族だったこともある。漢民族の王朝ばかりではなかったのだ。

展示品のプレートには、
「唐 ○○代××帝  作品名・素材名」
としか、書いていない。
西暦何年、という表示がない。
だから、作品を見る前に、隋が西暦何年くらいのことなのか、元が日本の何時代に当たるのか、というのをおさらいしておかないと、それがどれくらい古い物なのか、わからん。
しかも、「明」も「清」も300年近い王朝だったから、その何代目の皇帝かによって、だいぶ西暦年がずれる。
・・・なかなか、やっかいなのである。
「みっちゃん!(夫のこと) この壺さぁ、1400年代後半くらいだよ!」
とか、
「この酒器は800年代だよ!」
ついでに「この青い釉薬はトルコから渡ってきたんだって!」
と、イチイチ私は西暦に換算したり説明文を読んで夫に言うのだが、夫は大して興味がないので(興味もないのに丸々2日間つき合わせた)、
「ふ~ん」「へぇ~」「古いんだねぇ」「素晴らしいねぇ」
くらいしか、返事がない。
その代わり、たくさん写真を撮影してくれたけど。
興味もないのに、つき合わせて、実に申し訳ない・・・。
私も、夫にイチイチ説明するつもりはないのだが、興奮のあまり、感激のあまり、
「この香炉、900年代の物だよ!」
・・・という具合になってしまうのだ。

ところが、紀元前の作品には西暦が記してあった。
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この、真ん中の乳白色のピッチャーは、この博物館の所蔵品の中で一番古い。
なんと!
「紀元前3400年 旧石器時代」
などと書いてあった。
紀元前3400年!!! それって、いつのことだ! ・・・と思ってしまう。
確かにその頃、メソポタミアが建国され、黄河文明が始まったのだが・・・
あんまり古すぎて、ピンとこない。
日本だと、縄文時代になるのか? 
漫画テルマエ・ロマエのハドリアヌス帝は紀元100年くらいだし、クレオパトラだって、せいぜい紀元前60年くらいだ。
昔、テレビアニメで見た「はじめ人間ギャートルズ」の頃か???

いやはや・・・2日間に渡って、お宝の数々をじっくり見たので、本当に目の保養になった。
まさに、「目が潰れる」思いだ。
金や宝石を散りばめた豪華絢爛な物もあれば、白磁や青磁のシンプルな美もある。曜変天目のような偶然の美もある。
いくら見ていても、飽きない。
夫はどうか知らんが、私は興奮と感激の2日間だった。

実は、2日間通って、全部の収蔵品は見られていない。
今回は書画を割愛している。彫刻・細工・陶磁器だけで2日間を要した。
書画については、次回また訪ねた時に見るつもり。
次への課題を残しておくと、また訪ねるのが楽しみになる・・・というのが私の持論だ。
台湾なら近いし、また行くこともできるだろう・・・とヤマを張ったのだ。
さて、それはいつのことになるやら・・・
それまでは、買ってきた「故宮博物院所蔵品写真集」を読んだり、夫が撮ってくれた写真を眺めて楽しもうと思う。

故宮博物院の収蔵品は本当に素晴らしい。
ツアーで行かれた方は多いと思うが、時間があれば、もう1日行かれるのもお勧めだ。
時間がなければ、テーマを決めて見るのもお勧めだ。
太好了! 很好了!












posted by プアアカハイ at 15:22愛知 ☀Comment(0)日記